
あらすじ
街中を一人の犬型ロボット・ロボタックが彷徨い歩いていた。
ロボタック 「フラフラバウ……お腹が、空いた、バウ……」
風船配りのピエロとぶつかってその風船を吹き飛ばし、大好物のソーセージを持ち歩く少年に近づいてその母親から疎まれる。
その一方、雪柳カケル少年は今日も叔父・杉薫の営むシャードック探偵事務所へ顔を出していた。
カケル 「おじさん、いる?」
杉 「おう、カケルか。この番組、今日が最終回なんだ。日曜の朝の楽しみがなくなる~」
最終回を迎える「ビーロボカブタック」をオープニング時点から涙して観る叔父の大人げない姿に呆れ、テレビを消すカケル。
仕事にありつけず金に困っているという杉に二千円を貸し与えると、杉は大喜びで出前の注文を始めた。
そんな中、空腹でフラフラになったロボタックが事務所へ駆け込んで来る。
ロボタック 「バウ……もう、ダメバウ……」
意識を失い、その場に倒れ伏すロボタック。
ロボタックは杉の二千円分の出前をペロリと平らげ、元気を取り戻す。
ロボタック 「美味しかったバウ~ご馳走様バウ」
杉 「この、ワン公~!」
ロボタック 「ワン公じゃないバウ。ロボタックバウ! この御恩は一生忘れないバウ。では」
杉 「どうも……あ~!?忘れられて、たまるかーっ!」
持ち合わせがないというロボタックに激高して警察へ引き渡そうとする杉を見て、慌てて止めに入るカケル。
カケル 「おじさん、警察に引き渡したって、お金は戻ってこないよ!」
ロボタック 「こないバウ!」
杉 「そういやぁ、そうだな……よし、じゃあ代わりにここで、働け!」
ロボタック「えーっ!?」
杉の元で働く事になったロボタックは、シャードックのゴミ出しをしながらカケルに自分がハラッパ国からランドツールを探してアメリカへ渡った末に日本へ来たこと、仲間のカメロックと共にランドツール捜索の旅に出る際にハラッパ国長老から笛型アイテム・ワンダフルートを授かったことを話す。
杉はそんな無駄話をして仕事の手を止めているロボタックをどやしつけ キッチンの掃除を押し付けていると、彼の大学の先輩であるスキンヘッドの男性刑事・唐松が依頼に来る。
杉 「警察手帳を失くした?」
唐松 「昨日また怪盗チェリーを取り逃がして……ヤケになってハシゴ酒しちまったんだよ! 五万出すから見つけてくれぇ……さもないと俺は、クビだあ!」
唐松が捜査の手がかりとして挙げられる物は、仕事で使う手錠と自身の携帯電話、何故か持っているどこかの鍵と神社で拾った謎の巻物だけだと言う。
するとその携帯が鳴り、世間を騒がせる怪盗チェリーから新たな予告状が来たとの報告が届く。
唐松 「分かりました。すぐに向かいます! それじゃ、杉。頼んだぞ。んーっ!」
悪ノリで杉の頬にキスすると、大慌てで去って行く唐松。
杉 「やーん! ……ああ、先輩、ココ、コート!」
杉もその後を追って出ていき、入れ替わりにキッチンの掃除を終えて戻って来たロボタックは唐松の置き残した巻物に反応する。
ロボタック 「あーっ、なぞなぞコンパスバウ!」
その巻物こそ、ランドツールが入っている不思議な箱・ワンダーボックスを開けるカギとなるシュビドゥバッジの在りかがナゾナゾ形式に示されたなぞなぞコンパスだという。
ロボタック 「謎の一。青き扉並びし箱あり。その二段目の右から三つ目の開かずの扉を開き放て。呪文は、シュビダバシュビドゥバ……」
なぞなぞコンパスに記された内容を読み、「青き扉並びし箱」とは青い扉のマンションやビルの事ではと推理したカケルはロボタックと共に探しに行こうとするが、
杉 「待った! 唐松先輩の警察手帳を探す方が先だ! 掃除したくらいじゃエビの尻尾分にもならん!」
戻って来た杉が唐松のコートをロボタックの鼻に押し付ける。
ロボタック 「臭いバウ~」
その臭いを頼りに自慢の鼻を利かせて唐松の辿った足取りを追うロボタックとそれに同行したカケルは、ロボット修理サービスを営むウサギ型ロボット・ミミーナと遭遇。
ミミーナ 「ちょっとちょっと。バッテリー充電していかない?」
常連である工事作業用ロボット・ゲン公の充電を終えたミミーナは目の前に現れたロボタックの胸を開いて驚く。
ミミーナ 「あっ、ワンダーバッテリー。あなた、ジシャックチェンジできるの?」
ロボタック 「そうだバウ!」
ミミーナ 「凄いピョン~。ねぇねぇ、ジシャックチェンジしてみて。ねぇ、してみてよ~」
しつこいミミーナには取り合わず先を急ぐ二人だが、その様子をカラス型のロボット・ダークローとカバ型のカバドスが見つめていた。
ダークロー 「おいカバドス、見たか?」
カバドス 「はいはい、見たドスよ~」
ダークロー 「あいつもハラッパ式ロボットなのか……」
しつこく追って来るミミーナから身を隠していたロボタックとカケルは、通りがかりの男性とぶつかってしまう。
カケル 「どうもすいません……あっ、おんなじだ!」
男性が落とした荷物を拾い上げると、そこには唐松が持っていたものと同じ鍵があった。
カケル 「この鍵、何の鍵?」
男性 「駅前広場の、コインロッカーだけど?」
ロボタック 「コインロッカーバウ!」
駅前広場に辿り着き、コインロッカーから唐松の警察手帳を見つけ出す二人。
ロボタック 「これで探偵さんにこき使われなくて済むバウ!」
カケル 「あーっ! なぞなぞコンパスに書いてあった青き扉並びし箱だよ!」
気付いてよく見ると、コインロッカー二段目の右から三つ目は「故障中」の張り紙付きの開かずの扉である。
ロボタック 「これを開ければ、シュビドゥバッジが手に入る! 呪文は……シュビダバシュビドゥバー!」
ロボタックが呪文を唱えると、封鎖されていた扉が黄金の輝きを放ちながら開き始め、中にはシュビドゥバッジを収納した金のトロフィ・オメデトロフィーが入っていた。
ロボタック 「やったバウ! やったー!」
カバドス 「待つドス!」
だが喜びも束の間、ロボタックは突然現れたカバドスに殴り倒される。
ミミーナ 「いた!見つけたピョン」
ダークロー「へっへぃ!」
ロボタックを追ってきたミミーナと、カバドスと共に来ていたダークローが集まり、お宝を前にして四人のロボットが揃った。
ミミーナ 「なんて酷い事するのよ!」
ロボタック 「お前達は誰バウ?」
ダークロー 「ハラッパ国のはぐれガラス・ダークロー様だい!」
カバドス 「わいはカバドス!」
ダークロー 「シュビドゥバッジは、俺達が貰った!」
ダークローがオメデトロフィーに触れると、突如空が暗雲に覆われ、巨大な像のロボット・マスターランキングが現れる。
マスターランキング 「まーて待て待て、待つんだゾウ! よくぞ謎を解いたゾウ。我こそはシュビドゥバッジの番人、マスターランキングだゾウ」
名乗るや否や、ランキングはダークローの手からオメデトロフィーを回収。
マスターランキング 「最後の試練を与えるゾウ! 試練を乗り越えて一番になった者にこの中のシュビドゥバッジを与えワンダーボックスを開けさせるゾウ。ランキングアリーナ、オープン!」
ランキングはクジラの形状をした自身の下半身をアリーナ状に変形させると、部下である小象ロボットの一人・準備するゾウを呼び出す。
準備するゾウ 「準備するゾウ!」
準備するゾウがロボット一同の周りを一周すると、四人の手元にはトレーに詰まれたざるそばが現れた。
オメデトロフィーに最初に触れたダークローはアドバンテージでざるそばの量が少なくなっていること、ざるそばを落とせば失格であることを説明し、間もなくスタートする第1回シュビドゥバッジ争奪レース「ハラハラドキドキ障害物レース」のコースを鼻のモニターで表示するランキング。
ランキング 「それでは、選手は位置について……用意!」
ランキングの鳴き声を合図に、一斉に走り出すロボット一同。
カケル 「ロボタック、頑張れよーっ!」
そこへ二人目の小象ロボット・監視するゾウが現れ、四人を監視しながら追い始めた。
監視するゾウ 「監視するゾウ!」
ダークローを先頭に大慌てで駆けだした一同はランキングの示すコースに沿ってカップラーメン好きの一般人・山茶花さんの家の壁を突き破って通り抜け、高層ビルの屋上まで辿り着き、ビル間に張られたロープを見て綱渡りを要求されている事を知ったダークローはショックで目を回す。
カバドス 「もー、カラスの癖に高所恐怖症なんて洒落にならないドスね~。わいに任せるドス! ジーシャーック!」
カバドスはスペシャルモードへと変形して気絶したダークローを抱えながらも器用に綱を渡り、ミミーナとロボタックもその後に続く。
ロボタックの重みに耐えきれずロープが切れるが、ロボタックは落下しながらも切れたロープをターザンのように扱ってビルの中を潜り抜け、地上を進むダークローとカバドスの真上に落下する。
ダークロー 「ん?負けてたまるかっちゅーに!」
その衝撃でダークローは意識を取り戻し、気を取り直して進む一同だが、カバドスはバッテリーを消費してしまい元の姿に戻ってしまう。
カバドス 「スペシャルモードはパワーを食うドス。エネルギー補給ドス……」
手元のざるそばをつまみ食いすると、目ざとく見つけた監視するゾウがランキングへと報告し、カバドスは失格を言い渡される。
カバドス 「ええっ! そんなカバな……」
後ろに並ぶ者の脱落を知る由もなく走り続ける一同は遂にゴールを発見するが、その前に三人目の小象ロボット・邪魔するゾウが立ち塞がり一同に向けて大岩を転がす。
邪魔するゾウ 「へっへっへ、邪魔するゾウ!」
その大岩に吹っ飛ばされるも、根性を出して立ち上がるダークロー。
ダークロー 「男ダークローの意地、見せてやるっちゅーに! ジーシャ―ック!」
ダークローもスペシャルモードへと変形し、愛用武器であるカラスライサーで次々と岩を砕いて進む。
それに続いて変形しようとするもバッテリー不足で焦るロボタックだが、追いついたカケルがワンダフルートの使用を提案する。
ダークローSM「そうはさせるかっちゅーに!」
ダークローはカラスライサーを投げつけてロボタックが取り出したワンダフルートを遠くへ弾いてしまい、態勢を崩したロボタックは大岩の下敷きになる。
そのワンダフルートにも容赦なく迫る大岩。
カケル 「させるかー!」
カケルは咄嗟に飛び出すと、間一髪の所で潰されそうになったワンダフルートを救出。
カケル 「ロボタック、ジシャックチェンジだ!」
ロボタック 「カケル!」
カケルがワンダフルートを吹くとロボタックのパワーがみなぎり、
ロボタック 「ジーシャ―ック!」
大岩を砕いて遂にスペシャルモードへの初変身を果たす。
ロボタックSM「勇気リンリン、腕はビンビン。笛の音色がワンダフル! ロボタック・アズ・ナンバーワン!」
ミミーナ「凄いピョン!」
カケル「カッコいーっ!……あっ、ワンダフルートが!」
役目を果たしたワンダフルートは砂になって消滅した。
ロボタックは棒状の武器・RKバーで大岩を砕いて進み、対峙したダークローのカラスライサーすら弾き返すとダークローの頭部をRKバーで一撃。
ダークローは目を回して動けなくなり、ロボタックは悠々とゴールへと辿り着く。
ロボタックSM 「やったあ! 1位だ!」
ミミーナ 「やったー! 2位だピョーン!」
ダークロー 「俺様は3位だっちゅーの……」
変形を解除し、表彰台に立ったロボタックはマスターランキングからオメデトロフィーを譲り受けると、念願のワンダーボックスの前まで案内される。
ロボタック「遂にランドツールが手に入るバウ!」
期待してオメデトロフィーの中のシュビドゥバッジを取り出しワンダーボックスの扉を開けるロボタックだが、中に入っていたものは取説付きの新しいワンダフルートだった。
落胆するロボタックの前でワンダーボックスを開ける為のバッジ穴が二つに増える。
ランキング 「次のお宝が欲しければなぞなぞコンパスの謎を解き、シュビドゥバッジを手に入れるんだゾウ」
見ると、オメデトロフィーの中には次のなぞなぞコンパスが入っていた……
カケル達の元へと戻り、一部始終を報告するロボタック。
一方、ビリになったカバドスは罰ゲームとして爆弾付きのランニングマシーンで走らされていた。
ダークロー 「カバドス、先に帰ってるぞっちゅーに!」
カバドス 「支店長代理。そりゃないドス……えっ、みんな帰っちゃうんドスか?」
一人残されたカバドスは過酷な罰ゲームに思わず足を止めるがその影響で爆弾が爆発し、4人目の小象ロボット・反省するゾウが尻を槍でどつき回す。
反省するゾウ「反省……するんだゾウ!」
その後ロボタックとカケルは依頼通り唐松の警察手帳をコインロッカーから取り出し、杉の元へと届ける。
カケル「きっと酔っぱらってどこかに置き忘れちゃいけないと思って、刑事さん自分でコインロッカーに預けたんだね」
杉「ああ。それを忘れちまうなんて、先輩らしいや!ま、ともかく五万円ゲットだ。二人とも、よくやった!」
別れを惜しむカケルをよそに二千円分の仕事は果たしたと去って行こうとするロボタックだが、
杉「甘いぜロボタック。うちは自給1円だから、まだ5円分ぐらいしか働いてもらってねぇ。後の1995円分は……住み込みで働いて貰わなきゃ、なぁ?」
ロボタック「そ、そんなぁ!鬼バウ……」
杉・カケル「ハハハハハ!」
ロボタック「バウ……」
こうして、シャードック探偵社に住み込みカケル達と共にランドツールを探すロボタックの冒険が幕を開けたのだった。
解説
記念すべき第1話。
本作のメインライターとなる山田隆司が世界観やステップの多い設定を上手く1本に纏めつつ、キャラクターの魅力を初回から存分に押し出して最高に面白い幕開けに仕上げている。
本エピソードが初公開されたのはテツわんロボタック新番組企画書。
この時点では7ページ分での起承転結を公表し、続く第1話準備稿で全36ページの本格的な着想を開始。
その後に加筆・修正を加えて全32ページに凝縮した第1話決定稿がようやく「テツわん」から「テツワン探偵」のものとなる。
タイトルは準備稿・決定稿共に「迷探偵ロボタック登場」で、本編で初めて「犬も歩けば迷探偵」との洒落たネーミングが付けられた。
作中のキャラが前作「カブタック」を視聴しているという小ネタは「2作目のコメディ番組」だからこそ冒頭から堂々と展開できるメタギャグ。
そのカブタックでも前作にあたる「ビーファイターカブト」が実在のヒーローではなく架空のテレビ番組として扱われておりその踏襲型ではあるものの、本作は前年と同じロボットコメディ路線という立ち位置を活かした笑いを追求。
カケルの心情に重点を置いて観ると、「カブタックに興味を示さなかった少年が『ロボタック』を体験する話」という非常に面白い構成になっている。
尚、企画書や準備稿の段階ではテレビに映るカブタックに対して
「こんなロボットがいてくれたら、商売敵のゴールドプラチナ社みたいに大儲け出来るんだがな」
「こんな役に立つロボットがいるわけ……」
の会話の直後にちょうど事務所に倒れ込んできたロボタックを見て「いたりして!」と介抱する上手い繋ぎだったものの、流石にメタ色が強すぎて惜しくもお蔵入りになった模様。
そのようなメタネタで処理されている為に同じ世界観ではないとはいえ、カブタックが目覚めてスターピース収集を開始した1年前(1997年初頭頃)にロボタックもアメリカへ渡ってランドツール捜索を始めており、両者のアイテム捜索物語は時系列としては同時並行というのも2作目の設定として上手い。
そのカブタックの第1話と比較すると、前年の譲ポジションに当たるカケルが初レースに直接参加しない展開は作品のメインターゲットとなる児童層にとって物語への没入感を欠くものになってしまっている反面、前作ではやや強引だった初変形過程が本作ではカケルの体を張った勇気ある行動により もたらされたものとしてドラマチックに描かれている点は2作目たる大きな進化と言える。
こちらは企画書の構想時点ではバッテリー不足の為に自力変形が出来ずワンダフルートを吹くロボタックだが上手く吹けずカケルが代わると音が鳴ってスペシャルモードへ初変形という捻りのない展開で、 実際の執筆にあたって動的なドラマが加えられている。
劇中では2話の冒頭を飾った「ワンダフルートは入手した者の友達しか吹けないと知ったロボタックがカケルにフルートを託す場面」は、企画書では第1話の新しいワンダフルート入手直後に描く事が予定されていた。
かつての不思議コメディシリーズでは斎藤晴彦、市川勇、佐渡稔ら定番の個性派俳優を筆頭とする所謂「面白おじさん」がロボット達に負けない強烈な存在感を発揮して人間側のギャグを盛り上げており、前作で良い味を出していた小金井太郎(演・鈴木ヒロミツ)に続き本作は大高洋夫と赤星昇一郎がアドリブ全開でそれぞれ杉薫と唐松チハルを好演。
二人の絡みが数多の必笑場面を生み、面白おじさんギャグもグレートアップされている。
企画書によると唐松は杉にとって「大学の先輩」だそう。
準備稿ではカケルが杉に最初に渡したのは千円であり、杉が「今日は俺の誕生日だから」とねだった事で渋々もう千円多く貸し出している。
第1話が誕生日とは相当な主役感満載であり、ロボタックの生活環境は最後まで杉との二人暮らしだった事も相まって この内容で放送していては完全に本来の人間側主人公であるカケルの立場を喰ってしまいかねなかったと思われる。
ただ、そうなると杉視点で「誕生日にハラッパ国から時給1円で使える犬型ロボットが送られてくる話」と位置付けられるのが面白い。
杉が注文した出前先の人間(準備稿では洋食屋の主人、決定稿ではそば屋の主人)は台本のみ登場。
洋食屋の主人はすぐに来なければツケを払わないと脅されて開店前からシャードックへ出向いたものの、実際は出前の代金しか支払ってもらえず「ツケの方は怪盗チェリーを捕まえたら、払ってやる」との返答を受けると、お釣りの20円を乱暴に手渡して不機嫌に去って行くという不憫な役柄。
その背中にかける杉の言葉は「なんだよ、あの態度! もう取ってやらねぇぞ!」であり、1話冒頭から杉薫という男の人間性をよく物語る爆笑場面となっている。
変更後のそば屋の主人は「ツケの方はこの次、この次」と返答され、杉を逆上させる感情的な態度を取る事なく渋々と引き上げている。
出前を勝手に食べられて泣く杉に対しロボタックは「うぷぷ、大人のくせに泣いてるバウよ」と発言。準備稿の時点では1話のカブタックの台詞と完全にカブっている。
1年前の回想でハラッパ国長老からワンダフルートの説明を受けた時の対応も「うぷぷぷ。ワンダフルとフルートでワンダフルートなんて、そのままバウ」とどこか相手を苛立たせる振る舞いで実際の1話では台詞のなかったタートレック(カメロック)にその言動をたしなめられており、8話以降のロボタックの優しさ溢れる理想的な主役像は番組制作段階の構想にはなく全て第8話を手掛けた扇澤延男による影響だった模様。
新番組予告映像に流れた「居酒屋を背にしたダークローとカバドスの場面」は、撮影はしたものの実際は尺が足りず本編への挿入が見送られた未使用カット。
台本では唐松刑事の昨晩の足取りを追うべくロボタックとカケルが居酒屋を訪れ、その付近でダークローとカバドスに遭遇。
台本上でのカケルは「見かけねぇロボットだな。よう」と気軽に声をかけてきたダークローを「叔父さんの事務所のライバル会社のロボット探偵」として既に認識しており、「ライバルってのは、実力が同じ時に言うもんだ! シャードック社とうちとは月とスッポンほど違うっちゅーの!」「そうドス! 杉のとこが月でうちがスッポンドス!」「バカ! 反対だっちゅーに!」「嘘~~っ! スッポンは食べられるから、月より上じゃなかったドスか?」「ハハハ、カバドスじゃなくて、バカドスバウ」との軽妙なやり取りに発展する。
劇中でカケルが「青き扉並びし箱」の候補として挙げた青い扉のマンションも準備稿では実際に捜索し、右から三番目の部屋に住んでいたヤクザに「何やねん!?」と凄まれ慌てて引き返す。
ダークローとの決戦は準備稿ではカラスライサーを受け止めきれず苦戦し、シッポ剣(決定稿ではRKバー)をレーザー状に変えて投げつける事での逆転勝利。
台本でのRKバーはメタルヒーローの原点である宇宙刑事シリーズのレーザーブレードを彷彿させる仕様で、前年のビリットスティックのような武器玩具の発売を想定していた模様。
番組開始時点で既にレーザー発行ギミックを廃している辺り、早い段階で商品化の計画は没になっていたと思われる。
台本ではワンダーボックスの中身を知ったダークローは「それだったら、頑張るんじゃなかったぜ」とコメントしているものの、実際にもしダークローがこの初戦を勝ち抜いてワンダフルートを入手していればフルートは入手した者の友達=カバドスの物となり、今後はレース時に遅れを取っているカバドスが先頭を走るロボタックをフルートで自分の元へ呼び寄せたり日頃から無意味なジシャックチェンジを連発させてバッテリーを無駄に使い果たさせたりと様々な妨害に使われる最悪のアイテムとなっていたと考えられる。
後に訪れる本格的な試練と比べると序盤はまだ緩いノリのコメディ対決とはいえ、その試練を助けるアイテムはこうした1つ1つの勝利あってこそ得られた物である所は物語前半戦におけるアイテム獲得劇の大きな魅力。
ブログ主の本話初見は仮面ラジレンジャー連動企画での東映特撮YouTubeによる無料配信。
まだ本作の手軽な視聴環境がなかった2015年当時、動画で部分的にしか観れなかった各ロボの初変形シーンや本編を視聴しないと意味の分からないミュージックコレクションの楽曲解説が映像で全て1つに繋がり、興奮と感動に溢れた最高の24分でした。
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