はじめに

前作「ビーロボカブタック」の変形ロボットによるコメディアクション要素を踏襲し、より魅力的なキャラクターによるドラマと心に染み入る友情劇で17年間続いた東映メタルヒーローシリーズの最後を優美に締め括った名作。
それがテツワン探偵ロボタックである。

あらすじ

最先端の科学技術で多くのロボットを製造するハラッパ国は自然災害シーホールの接近によって消滅の危機に陥っていた。
ハイスペックなヒーロー形態・スペシャルモードへと変形するジシャックチェンジ機能を備えたハラッパロボ・ワンダータイプであるロボタックとカメロックは祖国を救う為の秘宝・ランドツールを探して奔走。
日本へやってきたロボタックはカケル少年達と深い友情を結び、その行く手を阻むはぐれワンダータイプ・ダークロー&カバドスと競い合いながらランドツールを得る為の難解な謎解きやレースに励むのだった。

以下、「テツわんロボタック(企画段階での本作の仮名称)」新番組企画書より、一部を抜粋。

今年は謎解き名探偵!

犬といえば追跡です。
猟犬、警察犬、トリュフ犬…etc、ロボタックもまた追いかけます。
彼の追いかけるのは様々な「謎」。
日本にやって来たロボタックが、パートナーのカケル君と知り合った後、住み込んで生活するのがカケルのおじさんの探偵さんの「探偵事務所」。
そこには、様々な「謎」が持ち込まれてきます。
「ロボタック」は、気まぐれなおじさんを手伝って、カケル君やその仲間と一緒にその謎を追います。
多くのエピソードにおいて、この探偵依頼が発端となって、ロボタックの活動が始まります。
小は家出猫の行き先探しから、大は世間を騒がす大怪盗の挑戦状まで。
といっても、ほとんどは、前者ですが。
小さな事件でも、ダークロー君やカバドス君や探偵さんまでもでしゃばってきて、こじれにこじれます。
脱線しつつもなんとか謎を解決するロボタック。
またひとつ、「人間」を学びます。

一方、ロボタックにはもうひとつ追いかけている「謎」があります。
ロボット達の故郷を救う宝「ランドツール」のありか。
えてして日常に追われて忘れがちだったりもするのですが、ランドツールを手に入れることこそ、彼が日本へやって来た目的なのです。
その宝のボックスを開く鍵である「バッジ」を手に入れるために、ロボタックたちロボットは、毎回予言のアイテムによって示される手がかりの謎を解かなければなりません。
その結果が全くの骨折り損に終わることもあれば、見事バッジを手に入れて御宝ボックスを開き、宝のアイテムを手に入れることもあります。
ただし、ランドツールはなかなか簡単には出てきてくれません。
ロボタックがどんな御宝を手に入れていくか、そして、ランドツールはいつ見つかるか……シリーズの縦の流れの興味です。

探偵事務所に持ち込まれる「人の謎」とランドツールを巡る「世界の謎」。
2種類の謎を追いかけるロボタックの騒がしい日常を楽しんでください。





作品解説

「ビーファイター」シリーズから「カブタック」へ。
王道アクションヒーロー路線からロボットコメディ路線へ派手に一変しつつも、主要ロボに前2作の定番となっていたカブト、クワガタ、テントウの3大モチーフを当てはめた事で強烈なインパクトの元に絶妙なバトンタッチ効果を発揮したカブタック。

その人気を受けて同路線での後番組として制作された本作は 幅広い選択肢の中からモチーフを選び、「誰もが身近に接したことのある動物」「世界中の人々にとって最良の友人」となる生き物は犬であるという結論の元に犬ロボットを主役に置いて その他のロボットも動物で統一。


動物をベースにしたデザインは見事にコメディロボの可愛さとシンクロし、犬らしさを詰め込んだ愛らしい容姿に優しさ溢れるキャラクター像と佐々木望の高音ボイスが映えるロボタック、亀特有のとぼけた外見に堀秀行のキザな二枚目ボイスのギャップが活きるカメロックを始めとするビジュアルと内面の魅力を兼ね備えたロボキャラ達が織りなす物語は、東映ロボットコメディの頂点とも言える究極の映像美を生み出すことに成功する。


そして、本作では新たに「探偵」「謎解き」要素を導入。

毎回出題されるナゾナゾはあくまで作品内での場所や出来事を指したものが主になり、本来理想とされる視聴者参加型の「謎解きの面白さ」よりも「謎を解くキャラの行動の面白さ」に集約されている部分は否めない。
しかし、真剣に答えを考え 時には身を削った努力で懸命に謎に挑むロボタック達のひたむきな姿勢はドラマとして観る者の胸を打ち、魅力的なキャラクターという最高の下地の元で描く事によって視聴者に「謎に挑む冒険心の大切さ、楽しさ」を教える素晴らしいものに仕上がっている。

脚本面でメインライターを務めるのは前作でも第1話や主要エピソードを執筆した山田隆司。
実質的に前作のメインだった西園悟が引き続きコメディとヒーローアクションをバランス良く両立させたシナリオを手掛けつつも本作ではサブに回って担当回が減少した影響もあり、完全なメインライターとして世界観構築の基礎となる1・2話に始まり最終編2作を書き上げる終始一貫ぶりを発揮して感動の結末に仕上げている。

2年連続したロボコメ路線の執筆で完全に要領を掴んだ宮下隼一と扇澤延男はそれぞれの持ち味でロボタックとカケルの友情劇を巧みに描き、不思議コメディでお馴染みの浦沢義雄も初参加回から視聴者を唖然とさせる特有のシュール作風を存分に押し出して独自の世界観を魅せ、お~いとしのぶが生前に遺した温かみのあるエピソードも深く印象に残る。


物語前半(特に8話~18話)は、ロボタック・カメロック・ダークロー・カバドスの初期ワンダータイプ4人の存在を見事に活かし、単発エピソードの積み重ねでさりげなく秀逸に描かれた連続劇が印象的。

優しい心と強い信念で試練に挑むロボタックと、カメロックに対して劣等感による憎しみを抱くダークローという当初は別々に進行していたキャラクタードラマは、窮地に陥ったカバドスを体を張って助けようとしたダークローの姿を見たロボタックが敵であるはずの彼を援助する優しさを見せたことにより交わり始める。

その後ダークローは相棒の助けやずる賢い発案で反則技を編み出しカメロックを連続して破るも、ロボタックは同じ技を耐え抜き努力と根性でダークローを上回る結果を出して連勝を収める。

そんな負け続きのダークローを落雷が直撃し、雷の影響で一時的に目的の為には手段を選ばない極悪非道な戦闘ロボットへ変貌したダークローはカケルを人質に取った卑劣な罠をしかけてロボタックと対決。
カケルと過ごした日々を思い出して友情を爆発させ間一髪でカケルを救い、ダークローを破ったロボタックはこの戦いでランドツールを得る為に必要なアイテム・ランドバッテリーを入手する。

この時点でダークローはカメロックよりロボタックを真のライバルとして認識していた節があり、越えられない宿敵という壁はむしろ高くなっているもののカメロックへ劣等感によるドロドロした恨みを募らせていた頃と比べ、自然と憎しみは浄化され心中穏やかになった印象を受ける。

一連の連続劇から これは一度ロボタックの優しさに触れた上でその実力を見せつけられたからこその変心だと捉える事ができ、ダークローの心変わりを通して一番に感じられるのは 一途な真心と苦難にも挫けない確かな強さによって敵の心すら動かすロボタックの主人公たる魅力。
11話という長期間を費やして連続した物語をしっかりと描いたことで、数話に渡るアイテム獲得劇とキャラクタードラマが絶妙に両立した結末を最高に気持ち良く締め括っている。

物語後半からはハラッパ国の滅亡を願う最強最悪のワンダータイプ・トラボルトが現れ 今までの対決ルールを無視して力づくでランドツールを奪い去るという衝撃の展開を持って 前作からの定番だった審判ロボの監視下で毎回バラエティに富んだ勝負をするコメディ対決パターンを廃止し、以降は試練達成を巡って善と悪が問答無用に拳を交える正統ヒーローアクションを展開。

この路線変更によって本題である謎解き(試練達成)のドラマがより丁寧に描かれる事となり、これまでの対決内ではそれぞれ個人戦に挑むロボット達とその応援係が主だった子供達は一致団結して共に支え合い身体を張って一つの大きな試練に挑むようになる。

やがて条件次第で頼もしい正義の戦士か凶悪な悪の闘士のどちらかに変わる合体ロボ・スピーダムとマイトバーンが登場。
時として第3勢力ともなり得る存在の乱入によって変形コメディロボによる本格バトルはより一層白熱していく。

そして終盤42~45話はカケルとの別れ、高峰親子の確執、使命の為に進んで命を投げ出そうとするロボタックの悲壮な覚悟とシリアスなストーリーを展開。

切なさを押し出す事で物語に深みを与え、決死の特攻を自ら引き受けて最後まで周囲に優しさを振りまくロボタックのいじらしい姿と カケルとの友情を経ての全てが収まった感動の大団円の尊さに涙戦崩壊は不可避である。

当ブログについて


99年1月生まれのブログ主にとっては生まれた翌週に終わってしまった番組であり、後に書籍やTCGの影響でメタルヒーローシリーズ全般に興味を持った際も、犬が苦手でコメディ特撮が嫌いだった幼少期のブログ主には「犬のコメディロボの話」とはまず縁がないだろうという印象だった思い出。

しかしそんな印象に反してメタルシリーズを全作追う中で視聴手段のあった本作の一部エピソードを視聴したところ その面白さとキャラの魅力に引き込まれ、特定の作品を繰り返し観ることが少なかったブログ主が短期間で何度も観返すほどに激しく熱中。

今まで興味のなかった不思議コメディシリーズにも本格的に手を出してしまうほどにロボタックという作品・東映コメディ特撮の世界に深くハマってしまいました。


まだ本作の視聴環境が少なかった2010年代前半、同じく未DVD化ながらもエピソード数本分なら24分フルで無料視聴できる機会に恵まれ作品資料の充実ぶりから後年も全話の情報が出回っていた前作カブタックと比べ、各話の内容やサントラ未収録の追加BGМの詳細は殆ど分からなかったロボタック。

それだけに視聴困難作という未踏の地に惹かれたブログ主にとってより強い憧れとなり、仮面ラジレンジャー企画の本編2話分無料配信と東映特撮ファンクラブ会員登録での全話見放題環境に歓喜。

全話通しで視聴することによって部分視聴時には分からなかった前半の連続性やロボタックの優しさ溢れる理想の主人公像、そして最終回の感動的な締め括りに心を奪われた結果、何よりも大好きな最推し作品となり当ブログの作成を決心しました。

当ブログは今後 不定期で各話解説を更新していく予定ですが、万が一 長期アクセスエラー等が発生した場合によるサイト移動の際はX(旧Twitter)アカウント@yoko_love_Eternのツイート及びツイフィール等にて告知します。

前作カブタックでは最終回でキャラの意味めいた言動の真意が明かされる重要場面を尺の足りなさから放送できなかったように 正味20分近くのテレビ作品では台本に書かれた全場面を放送する事は困難であり、毎回 泣く泣くの場面カットが行われてしまうのが現実。

そこでブログ主は撮影で使用された台本の収集を行っており、縁あってこの度 本作の新番組企画書や1・2話準備稿に始まり全45話中39本分の台本を入手。

今後予定している全話解説においては、台本に記載されている本編未使用場面の発信に重点を置き、ここでしか知れない本作の秘蔵情報を詰め込む事で当ブログへアクセスして下さったロボタックファンの皆様に良き「謎が解けたバウ!」が訪れますよう、積極的に台本情報を公開する所存です。



現在は98年当時の公式サイトのバックアップhttps://web.archive.org/web/20120724071944/http://tvarc.toei.co.jp/tv/user/program/read_story3.asp?Command=Old&SID=36#List
がファンの間で広まり、DVDはなくとも安定した有料配信サービスが増えた事で10年前ブログ主が感じた「観たいけど観れない、内容も分からない」作品ではなくなった現代。

そんな良い時代となった今こそ、当ブログの作成によって今度は「ロボタックの情報が充実した世界」を作る事をここに宣言いたします。


それでは当ブログを通して、テツワン探偵ロボタックという作品の隠された魅力に目を向けて頂けたら幸いです。

前口上
テツワン探偵ロボタック ファンブログ 〜ROBOTACK AS NO.1〜

コメント

カテゴリー