第2話 助けた亀の恩返し

あらすじ

シャードック社に住み込みで働く事になったロボタックは、仕事の合間を見計らってカケルと共にワンダフルートの取扱説明書を読んでいた。
ワンダフルートは入手した者の友達しか吹けないと知ると、カケルにフルートを託すロボタック。
カケル 「えっ、いいの?」
ロボタック 「カケルは友達だバウ」
カケル 「やりいーッ!」
しかしその一方で2つ目のナゾナゾ「大きなメカがひっくり返るとき、そのへそのゴマをとれ」は一向に解けず、背後からダークローにカメラで内容を盗撮されている事にも気付く由はなかった。
そこへカケルの同級生であり、彼らが結成しているYST(夢が丘少年探偵団)のメンバーである梅田コータ、榊シゲル、橘ミサキの3人がカケルを迎えに来る。
ロボタックとお互いに自己紹介を済ませると、杉にどやされたYST4人は慌てて学校へ向かった。
一方ダークローとカバドスはゴールドプラチナ社で金持ちの中年女性・大亀から猫探しの依頼を受け、「松」「竹」「梅」3つの調査プランについて説明していた。
カバドス 「松は十万とお高いドスが、1日で探し出すドス」
大亀 「……松でお願いするザマス」
ダークロー・カバドス「お有難うございまーす!」
上機嫌で支店長室に戻り、折に閉じ込めた猫たちの中から指定の猫を探す二人。
カバドス 「ああ、これドスこれドス。盗んできた中にいたドスよ」
ダークロー 「バカヤロー! 人聞きの悪い事、言うなっちゅーに。盗んだんじゃなくて、ほ、保護、ホゴ、ホゴ、ホゴ、ホゴをしたんだよぉ!」
そんな二人の悪どい手口をゴールドプラチナ社の本社取締役・高峰桜子が半ば面白げに見ていた。
カバドス 「高峰桜子!」
桜子 「呼び捨てはないんじゃない。これでも私は本社取締役なんだから。あんた達のボーナスの査定、どうしようかなァ」
ダークローは桜子の色気に魅了され、嫌がるカバドスに桜子の肩を揉ませる。
その後、授業を終えて下校中のYSTが「メカをひっくり返す」とは「カメをひっくり返せばメカになる」という意味なのではと推察しカメを探し始めた矢先、目前の川の中から颯爽と青いカメ型のロボット・カメロックが現れた。
カメロック 「駄目ロボットのロボタックが、私より先になぞなぞコンパスを見つけるとはな……」
いたずらなYSTは早速4人がかりでとびついてカメロックをひっくり返すが、爬虫類を元に作られたカメロックにはヘソがないと気付くと落胆して去って行く。
カメロック 「こ、こらっ! 私を起こしてくれーっ! 私はひっくり返ると……一人では起きられないのだ……」
そこへ運悪くパチンコ帰りの杉が通りかかり、亀を助ければ龍宮城へ招待されると思い込んだ杉はカメロックを助け起こすと、そのお礼に龍宮城への招待を強要した。
カメロック 「そ、それは……おとぎ話であって……」
杉 「じゃあ、金をよこせ! さぁ、さぁさぁさぁ!」
そこへ偶然通りがかったロボタックは、二人の間に入るとカメロックは同じハラッパ国から来たランドツールを探す仲間だと説明。
杉 「そうか、仲間か! それじゃあ、助けたお礼にお前も俺の探偵事務所で、働け!」
カメロック 「えっ?そ、それは……仕方ないか」
一方、なぞなぞコンパスの盗撮写真を見て一連の出来事に興味を持った桜子はダークロー達からランドツールはハラッパ国にとって必要なエネルギー源である事を聞き出していた。
桜子 「という事は、それを手に入れれば物凄い金額で売れるって訳ね?」
ランドツール入手が儲け話と知った桜子は「大きなメカ=カメを逆さにするとメカ=大亀」と見抜いて二人に知恵を貸し、その頃YSTも同じ答えに辿り着いてワンダフルートの機能でロボタックを呼び出していた。
そこへカメロックとミミーナも合流して大亀家へ向かう一同だったが、一足先に辿り着いていたダークローとカバドスが大亀からすげなく追い返される所に遭遇する。
大亀 「おへそは毎日洗ってるからゴマなんかないザマス!」


アテが外れて敵味方共に意気消沈する中、ロボタックは大亀家の横の空き地に大きな瓶を発見。
ロボタック「動物の亀じゃなくて、瀬戸物の瓶だったバウ!」
ロボタックが瓶のヘソに当たる位置に貼られている絆創膏をはがすと、中からゴマが溢れ出る。
その途端、ファンファーレと共にオメデトロフィーが出現。
今回はロボタックがしかとトロフィーを掴み、お約束通りマスターランキングが現れると初参加のカメロックにレースで勝てばバッジを手に出来る事を説明すると気合を入れて競技場へ上がる。
第2回シュビドゥバッジ争奪レースは「割れたら負けよサバイバルレース」で、競技名通り頭につけられた風船を最後まで割られずに残った者が優勝というもので、ロボタックのみアドバンテージで小さめの風船となっていた。
対決が始まりカメロックが潜伏場所を選んでいると、目星の場所には既にミミーナが潜んでいた。
カメロック 「女性とは戦いたくない。向こうへ行く」
ミミーナ 「よーし、カメロックの風船を……!」
カメロックの紳士的な振る舞いなど つゆ知らずカメロックを背後から襲おうとするミミーナだったが、そこへ最弱ロボットである彼女を第1のターゲットとしていたカバドスが現れ頭上から襲い来る。
カメロック 「危ないっ!」
カメロックは身を挺してミミーナを庇い 作戦が失敗して逃げ出したカバドスを追いかけようとするが、
ミミーナ 「カメロック様、危ない所を助けてくれて有難うピョン! 私、とっても嬉しい~!」
ミミーナはすっかり自分を助けてくれたカメロックの虜となってしまっており、その体を抱きしめて離さなかった。
しつこいミミーナを振りほどいて逃げ出すカメロックを尚も追いかけるミミーナだったが、その矢先に転んで風船を割ってしまう。
ミミーナ 「そんなーっ!」
失格退場となり、対決の場から消えるミミーナ。
一方、最後まで隠れ倒そうと計画していたYSTもダークローに見つかって風船を割られ、あえなく退場していた。
結果的にそれぞれの行動によって女子供を片付けた形となったダークローとカバドスは変形して二人がかりでロボタックを襲撃。
バッテリー不足のロボタックはカケルのワンダフルートの助けを借りて変形するが、2体がかりでは前回のようにはいかず苦戦を強いられる。
カメロック 「2対1とは卑怯だぞ! ロボタック、助太刀致す!」
加勢しようとしたカメロックだったが、こちらも転んでつまずき運悪くロボタックの頭上に落下して彼の風船を割ってしまい、彼を失格に追い込んでしまった。
カメロック 「すまぬ、ロボタック……」
カバドスSM 「これでこっちが断然有利ドス!」
ダークローSM 「残るはカメロックだっちゅーの」
カメロックは卑劣な悪への怒りを滾らせると、意を決して変形。
カメロックSM 「硬い甲羅は何の為、愛する者を守る為。気高き闘士・カメロック!」
カバドスSM 「貴様もハラッパ式ロボットだったドスか?」
ダークローSM 「カメロック、貴様に負ける訳にはいかないっちゅーに!」
カメロックの変形に動揺しながらも襲いかかる二人だったが、背後からカメロックの動きを封じてダークローをアシストしたカバドスはすんでの所で逆にカメロックの盾にされてしまい、カラスライサーで風船を割られて退場。
残るダークローもカメロックの武器・カメラズーカのトリモチで動きを封じられ、風船を割られてしまった。
ダークローSM 「何てこった……!」
カメロックSM 「やったあ!」
こうして優勝となったカメロックは表彰台に立ってシュビドゥバッジを受け取ると、現在のワンダーボックスの鍵穴が二つである事を確認。ボックスの中に眠るお宝を入手する為にも、バッジと共に渡された次のなぞなぞコンパスの謎を自らの手で解き明かす事を静かに誓うのだった。
カメロックがワンダーボックス空間から元の競技場へ戻ると、ミミーナを除く一同が何やら大笑いしている。
ロボタック 「罰ゲームで無人島に飛ばされたバウ!」
見ると、液晶画面になっているランキングの鼻には最初に失格となった罰ゲームとして無人島に送られたミミーナが泣き叫ぶ姿が映し出されていたのだった。
ミミーナ 「カメロック様、助けてー! カメロック様-!」
カメロック 「ああいう騒がしいのは苦手であったから、助かったよ」
ロボタック 「これで当分、町も静かになるバウね!」

      解説

前作ではもう1人のメインライター西園悟(山田氏が本作の執筆に移行した為 最終的には実質 真のメインに就任)に2話の執筆を譲る形となった山田隆司が本作ではカメロック、桜子、YSTメンバーの本格登場回となる第2話も続けて担当。

同一作者による2話続きの執筆によってより強固な世界観の下地が完成した。

本話までは新番組企画書の次点で大まかなプロットが練られ、台本にも準備稿と決定稿の2種類が存在する。タイトルは準備稿・決定稿共に「亀がやってきた」とストレート。

どちらの台本も冒頭はトイレで新聞を読んでいる杉が「怪盗チェリー、またもや逮捕できず……か。しかし、いい女だよなァ」と呟く場面からの幕開け。

他2人と共に最初はカケルをシャードックではなく彼の自宅の方へ迎えにいっていたというコータの台本での第一声は「やっぱり、こっちにいやがった!」であり、ややガキ大将っぽくなっている。

企画書時点でのカメロックの語尾は「~カメ」準備稿時点での一人称は「我輩」、更に名前はタートレックとだいぶ異なる印象。

台本でのカメロックは 恋人に指輪をプレゼントし「月給の3倍ってとこかな」と言う男性の目前の水面から姿を現す下りが初登場場面となり、指輪を手に取ると決定稿では「カットは平凡。輝きもイマイチ。くずダイヤの偽物だ」と細かく分析して立ち去る。


企画書段階では初登場の桜子に対する反応はカバドスが「ああ!桜子ちゃんやんけ!いつ見てもいい女やな!」ダークローが「ガセネタばかり持ってくる女にお茶なんか出さんでもいい!」であり、実際の本編とはそれぞれ真逆の対応が予定されていた。

盗んできた猫で金儲けするゴールドプラチナ社に対し、意図的ではないとはいえ

甥っ子がカメロックをひっくり返す

叔父が助けて金を要求

という流れとなったシャードック社もある意味で似た者同士。

カメロックがカケルは杉の甥っ子と知った時に「ハメられた!」と思っていないかが少々心配となる笑いどころである。

台本ではミサキがカメロックをひっくり返した事に対して謝罪し「シュビドゥバッジの為だったなら許すしかなかろう(準備稿では ~なら許すよ)」との返答を受ける描写があったものの、惜しくもカットされた。


企画書のプロットでは共闘を持ちかけるロボタックの誘いをプライドの高いタートレック(カメロック)が否定した事でロボタックはダークローとカバドスのコンビネーションに敗退。

結果は同じでむしろ敗北の原因を作ってしまったとはいえ、ロボタックを見下しながらも彼の窮地を見るや迷わず助太刀に入ったカメロックは当初の構想と比べるとだいぶ良心的になっている。

準備稿でのタートレック(カメロック)は初参加での優勝へ「当然であるな」とコメント。

仲間達一同で「カブタックチーム」だった前作に対し、個人競技となった本作は個々の変形ロボットキャラクターを独立したヒーローとして描く魅せ方を追求。

それによってカメロックの「2号ヒーロー」ぶりが初回から絶妙に引き立ち、今後は敵側の勝利回も挟みながらもロボタックがぶっちぎりの勝率を重ねていく事で主役を主役として描きながら他3ロボットの魅力も光る秀逸な構成となっている。

その反面 前年と比べて個人競技である事によってチームワークが薄くなってしまったというデメリットは、後半の展開でしっかりと補われていく。


一方でミミーナは無人島まで飛ばされるという度の過ぎた罰ゲームを受ける不憫な扱いであり、しつこい彼女を苦手とするカメロックばかりかロボタックまで「これで静かになる」と辛辣な発言。

不思議コメディ第2作「バッテンロボ丸」の主役・ロボ丸は身投げを図ろうとしている男を目撃したら仲間を呼んで楽しくその死を見物しようとするような過激派ロボットで 彼の主役にあるまじき問題行動を楽しむブラックユーモアが作品の見所となっており、既にキャラの魅力で独自の面白さを展開できている本作がここからその方向を目指したとしてもあながち間違いでもない。

しかし結果的に本作はロボタックの透き通るような心優しい主役像が最大の魅力とも言える作品に仕上がり、ミミーナに対しても友達へ一方的な愛を押し付ける迷惑な女だからと蔑むのではなく 終盤はカメロックとの仲を温かく気遣う様子も目立っている。

この時点ではまだ主役のキャラクター像という作品最大の骨格が定まっておらず、当初は望ましくない方向で試行錯誤していた模様。

本作が「2作目」として大きな進化を遂げた最も顕著な部分はやはりこの圧倒的な「2号ロボの魅力」が挙げられる。

同じ2号ロボとしては 一途な真心で少女に大切な事を教えたクワジーロと比べるとカメロックは逆に少女との交流で学びを得る未熟者で、そのくせ当初はロボタックを小馬鹿にしている傲慢な性格である。

しかしそれらの欠点はクールに決めようとしても完全には締まりきらない彼のコミカルロボたる愛嬌によってどこか憎めない領域に収まり、この先 自身の過ちに気付きロボタックとも友情を深めるカメロックの成長劇とも言えるエピソードが丁寧に描かれる事によって 前作ではどちらかといえば脇に置かれ気味だった2号ロボを本格的なメインキャラとして輝かせる事に成功。

声を演ずる堀秀行の熱演もあり、2年目にしてビジュアル・声・キャラクターと3拍子揃った究極の魅力を誇る2号ロボット像を確立した。

本作未見時、次作「燃えろ!!ロボコン」を先に視聴し(男ながらも)ロボイドのキザなカッコ良さに強く惹き付けられていたブログ主にとって、前年にも同じ堀秀行氏が声を演ずるロボットがいるという話は今まで関心の薄かった本作への期待を膨らませるには充分な情報。

見た目のイメージ通りの声であるロボイドとは対照的に、可愛さに溢れどこかとぼけた外見から平然と飛び出る2枚目イケボのギャップが最高に映えるカメロックは期待通りブログ主のロボタック世界における最初の推しに就任。

しかし番組開始時点で主役のロボタック、ライバルのダークローも同等の魅力を誇っており、これだけ輝いているロボイド以上の堀秀行ロボですら「この世界を代表するロボットの1人」に留まってしまう程の作品全体的なキャラクターの魅力度の高さに驚愕しながらあっという間に本作の虜となってしまったのでした。

2話
テツワン探偵ロボタック ファンブログ 〜ROBOTACK AS NO.1〜

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