
シャードック社ではプライドの高いカメロックがロボタック如きの助けなどいらん、と一人で前回入手したなぞなぞコンパスの謎を解こうとしていたが、
ミミーナ 「カメロック様-!」
日焼けと錆でボロボロになりながらもカメロックに会いたい一心で一週間かけて無人島から戻って来たミミーナに追いかけ回されると途端に情けない声を出して逃げ回り、ロボタックとカケルにかくまわれた事で仕方なく二人にも謎の内容を公開する。
カメロック 「実は私も解けないで困っていたのだ」
コンパスには時計や滝を現す記号や魚などが順番に沿って記されていた。
当然プラチナ社ではダークローがその様子をカメラに収めている。
ダークロー 「前回もう一つの所でカメロックにシュビドゥバッジを奪われたんだ。絶対に負けられないっちゅーに!」
ロボタック達が記号の一つである時計を探していると、近くの道路では赤眼鏡にスーツ姿の中年男性・柊が中央にでっぷりと横たわり交通の妨げとなっていた。
ロボタック 「何してるバウおじさん!」
カケル 「危ないよ!」
柊 「ワシもそない思うねんけど、動かれへんねん!」
動き方を忘れてしまったという柊は、同時に自分が何者であるかも忘れてしまった記憶喪失のようだった。
柊 「あのー……ここは、どこでっしゃろ?」
警察に届けようとするカメロック達だが、事情を聞いた杉が何気なく柊の身なりを調べると、そのスーツや腕時計は相当の高級品である。
杉 「警察も病院もいらねぇ。俺が身元を突き止める。私に任しといてください! さぁさぁさぁ、 きっと謝礼がたっぷり~! 仕事の失敗を取り戻せるぞ!」
こうして金に目のくらんだ杉によってシャードック社での本格調査が始まった。
杉 「ここからこのオヤジ、いや、お方がいらしたと思われる方を遡るんだ。そうすればきっと何か手がかりがある」
そこへコータ達3人がやって来てここにYSTも集結するが、
杉 「さぁさぁさぁ、今日はね、もうお疲れさーん!」
人数が減って分け前が減る事を危惧した杉によって甥っ子のカケル以外はあえなく追い返されるのだった。
気を取り直して調査と聞き込みを開始すると、記憶を失う直前の柊は身なりに反してあちこちの安物飲食店を訪れて庶民的なものばかりを食していたという。
杉 「マジで金持ちなのかなぁ……やっぱ勘違いか?」
一休みする杉の元へタイミング悪くティッシュ配りの娘がパチンコの宣伝に現れ、
杉 「金玉が俺を呼んでるぜ! 後よろしく! 今日は勝つぞ~」
杉はアッサリと調査から抜けてしまった。
一方、当の柊はなぞなぞコンパスの謎を見て次々と記号の意味を解き明かし、4つ目の魚の意味が分からず停滞してしまうものの 柊がふと上着を脱ぐとその下着には記号通りの魚の絵がプリントされていた。
そのはずみで地面に頭をぶつけた柊は途端に物静かな口調になり、
柊 「ここは何処だ。私は一体……何ですか君達?」
普段の高級食に飽きて庶民の味を堪能していたが食べ過ぎて道路に倒れ込み、ここでも思い切り頭を打ち付けた事でご覧の有様になってしまった事を思い出す。
その下着と同じ魚模様が描かれた近くの看板を見て何かに気付いたダークローは、カバドスと共に柊を誘拐。
企業会社・柊興産まで辿り着いたダークロー達はエレベーターに乗り込むと柊を用済みとして投げ飛ばし、柊は追いかけてきたロボタックに激突。
その騒動を聞きつけた会社員達によって柊の正体は社長だと明かされ、同時に最後の記号はこの会社のエレベーターの8階を示していた事が判明する。
8階に到着したロボタック達はダークロー達に負けじとあちこちの部屋を捜索。やがてロボタックが目星のドアを開けると、そこにはオメデトロフィーが置かれていた。
ロボタックがトロフィーに触れるとお約束通りマスターランキングが現れ、飛び込んできたミミーナも交えて第3回シュビドゥバッジ争奪レース「サイコロ振ってあがるが勝ちよ ご町内すごろくレース」が開始される。
ロボタック、カケル、カバドスが立て続けに1を出し「せみになれ」の指示の元に電柱に上ってセミの鳴き真似をさせられる中、ミミーナは5を出し「警官と踊れ」の指示の元に目の前の交番で警官とダンス。
だが続けて同じく5を出したカメロックが現れると警官を放り出してカメロックに飛びつき、監視するゾウの正体を現した警官によってランキングから失格を言い渡される。
一方3を出したダークローは田んぼで「カカシとキス」を要求されるがキスを迫るカカシの色仕掛けは実に気持ち悪く、思わず変形して応戦してしまった事で失格。
続けてロボタックは大好物のソーセージの並ぶ肉屋まで飛ばされるも「おあずけ」をくらい、山茶花さんの家まで飛ばされたカケルは「食べろ そして1回休め」の指示に従って目前のカップラーメンを手に取るも同じ目をひいたカバドスにカップ麺を奪われ失格となる。
邪魔するゾウの妨害に遭ってサイコロに失敗したカメロックに変わってロボタックは6を引いて大喜びするが、ゴール手前は1が「上がり」2~4が「1回休み」5が「失格」6が「?」という実にスリリングなものだった。
1狙いのロボタックだが6を引いてしまい、ランキングは6は「失格者以外全員上がり」だと発表。
カップ麺を食べ終えて眠りこけてしまったカバドスは失格となり、同点決勝なロボタックとカメロックは1分間の玉入れで勝敗を決する事となった。
変形して悠々と玉を入れるカメロックに対してバッテリー切れのロボタックは焦るが、カケルのワンダフルートに助けられ変形すると負けじと奮闘。
カメロックSM 「ロボタック、勝つのは私だ!」
ロボタックSM 「絶対に勝つ!」
白熱の試合の末、52対53でロボタックの優勝となった。
ロボタック 「わーい! よーし、次も勝ってシュビドゥバッジをもう1つ集めて、僕があのワンダーボックスを開けるバウ!」
後日。柊の正体を知った杉は謝礼の大金目当てで柊興産へと赴くが柊が途中で調査を投げ出した杉に関する記憶を失くしている為に門前払いされる一方、ロボタックの元には柊から贈り物が届いていた。
その中身は柊が運営する遊園地「オーシャンリゾート」の招待券3名分である。
カメロック 「遊園地だ~行こう行こう! 思いっきり遊ぶぞ~!」
はしゃぐ3人の元に、共に楽しく謎を探し歩いた柊の姿がインサートされる。
柊 「おおきに、ごっつ楽しかったで、ロボタック!」
解説
宮下隼一による初のサブライター脚本回。
作家が変わった事での世界観の変動や違和感などは特に見受けられず、ゲストキャラとの交流と競技対決の面白さを両立させた一種の雛型フォーマットになり得る傑作に仕上がった。
本話より企画書と共に完成していたプロットに沿って肉付けを行う脚本作りから各担当ライターが新しく編み出した発想で物語を広げていく従来通りの構成となった上、脚本の準備稿は制作されなくなり、以降は全話決定敲のみとなる。
脚本タイトルは「迷走!なぞなぞ絵地図」
柊が記憶喪失だという事情を聞いた際の杉が何故か工事現場で働いていた事については 仕事で尾行した後という設定だったと公式サイトに記載され、台本では「尾行相手に気付かれた上、まかれた……」とのこと。
今回の本格的なアクション場面はダークローVS案山子のみという良い意味での下らなさが変形ロボットコメディとして最高。
宮下脚本は正統派ヒーローアクションを好む傾向があり ダークローの戦いも後の宮下脚本回18話ではロボタックと本気で拳を交える白熱の盛り上がりを見せるものの、初担当回でいきなり特色を出して下手に開始 間もない作品世界観を崩す事なくしっかりと作風に合ったおふざけアクションを展開する脚本術は秀逸である。
物語冒頭でカメロックは相変わらずロボタックを見下している傲慢ぶりを見せ今回はロボタックがそのカメロックとの一騎討ちで勝利する話とはいえ、ひたむきな努力によってというよりは単純な実力による勝利のような形となってしまい、この戦いでカメロックがロボタックを正式に認めるといったドラマに繋がらなかったのはやや残念。
しかし明確な描写こそされなかったものの、本話以降カメロックがロボタックを下に見た態度が少なくなっていったのは今回の勝敗結果の影響とも考えられる。
今作では主人公と2号ロボの関係性も強化され、後の第9話ではロボタックとカメロックの友情が熱い展開と感動を生む。
金に目のくらんだ杉が規定通りのやり方で依頼を引き受けても一向に解決せず、柊は純粋なロボットや少年と楽しく謎解きを行った事で結果的に記憶を取り戻し 最後は大金ではなく
心の籠った楽しい贈り物で一同を喜ばせるという結末は子供番組として実に温かく理想的なエピソードに仕上がった。
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